スーパースターへの道 in カンボジア

『星』に手を伸ばせ!!たとえ届かなくても in カンボジア

オカマ犬“さそり”が見つめる、スーパースターを目指すカンボジアの若者たちの青春

バン・ノリ

ノリ

きっと、君とは“ハグ”をする事は一生ない

私は、君とよく話をする

ちょっとお互いに離れたところに座って、ボソボソと二人でどうでも良い話をする

君を二人で話していると、まるで私は、親戚と日本の縁側で話している気分になる

私と君の前に見える景色は、まるで昔から一緒に見てきたような

もう何も言わなくても、君は何でもわかってくれる

苦しいこと、辛いこと、嬉しいこと、楽しいこと

君はずっと私とカミナリ親父を見守ってきてくれた

 

これまでにも何度も書いてきたけど、私とノリは、たくさんケンカしてきた。

もう4年前になるけど、初めて会った時の君は、私にピアノを習いに来たんだよね。

でも、当時やっていたプロジェクトの一環で、カミナリ親父に強引に

「お前もダンスを踊れ」

と命じられ、まさかのダンサーデビューを果たした。

 

君は、音楽やダンスが大好き。でも、君はお母さんにこう言われていた。

「それじゃ、稼げない。自分で独立できないよ。」

君は、音楽やダンスをやりたい気持ちを必死に抑えつけていた。全てをお母さんのせいにして。

「お母さんがダメというから、やらない」

「自分は月収$500稼げるビジネスマンになって、お母さんを楽にするんだ」

そんな事を言いながら、英語学校で講師のバイトをしていたノリは

週末になると必ず、CSAにやって来た。

「歌手やダンサーにはならない」

と言いながら、CSAのイベントごとには必ず参加した。

 

ノリとのケンカで一番に覚えているのは、

ノリが仕事でCSAの遠征に一緒に行けなかったことがあって

その日、ノリは飲めないビールを一気飲みして、私に喰ってかかってきた。

「俺は今日、違う仕事の面接を受けてきたんだ!

よかった、今日、CSAの遠征に参加しないで。ビジネスマンになるチャンスを失うとこだった!」

私も酔っ払ってたので、めちゃくちゃに頭にきて

「なんなのその言い方は!あんたの言うビジネスマンって何なの!」

ケンカになった。

 

そして、カミナリ親父のカミナリが、ノリの“週末だけCSA”生活を終わらせた。

「お前、二度とオレの前で“でも”とか“お母さんが”とかっていう単語を言うな!

次にお前が自分に言い訳をしたら、ぶっ飛ばす!!」

最終的にノリは、自分で決意を固めた。

CSA専属になってからも、ノリはちょくちょく私やカミナリ親父に怒られた。

歌手になりたいのに、歌手のプロから習った「ランニング」が面倒くさくて

楽なトレーニングを選ぼうとしたり。

影で応援してくれる人の前で疲れているからって横暴な態度をしたり。

私やカミナリ親父に怒られても、ノリは決して逃げたりしなかった。

いつも、真正面から「ごめんなさい」と謝ってきてくれた。

ノリのその強さを、私は心から尊敬している。

 

ノリはめきめきと成長し、カミナリ親父の片腕になった。

だんだんと練習に身が入らなくなっていたコンに代わって、ついにリーダーになった。

あの時、一番にダンスができて、一番にお利口だったリンではなく

ノリがリーダーになったことは、運命だった。

 

やがて私がノリに怒られるような事もでてきた。

「レナは、何でもかんでも“ごめん”と謝り過ぎだ。

オレは、ちょっとした事で怒ったり、泣いたりしない。

あんまり謝られると悲しい気持ちになるのをわかってくれ。」

 

最近のノリは、みんなが仕事を終えた後でも、一人で仕事をしている。

「残業させて悪いね」と言うと

「レナやケンだって、いつもやってるじゃん」とちょっと怒る。

 

私とカミナリ親父は、ノリのお母さんとも温かな関係を作ることが出来た。

ノリのお母さんは、解っていた。

ノリが歌手になりたいと願っていることを。

でも、ノリに自分の力で歩ける大人になって欲しいと考えていた。

これが、カンボジアのお母さんたちの中ではなかなか難しいことで

「将来を見ること、息子の自立を考えること」

は、日本では当たり前でも、この国ではなかなかまだ難しい。

だから、親子共に自立できない場合も多い。

子どもを鎖で繋いでしまうか、ロイの家のように子供にお金の全てを頼ってしまう。

でもノリのお母さんは、ノリに

「大学の学費は自分で。自分の欲しいものは自分で買えるようにしなさい。」

とあえて子供に距離をおけるお母さん。

だから今、ノリがリーダーとなり、センターで歌を歌い、

お給料もシェムリアップ時代の倍以上になった事にホッとしているだろう。

毎年、年末はノリの実家で過ごし、ノリのご家族や親戚と共に踊った。

ノリのお母さんは、いつも贈りものをしてくださる。

シェムリアップのノリの実家で育ったマンゴー

お母さんが作った大根の漬物

お母さんのお店で作っているTシャツ

どの贈りものも、とても温かい

 

CSAの仕事を卒業しても、年末にはノリの家に行きたい

 

だから、ノリと私たちは、一生の友達だ

一生、友達でいるんだから、ハグをする必要はない

ノリがこの先どんな道を選んだって、それは変わらないだろう

その確信がある

 

カミナリ親父は、ノリにこう言った

「お前は、ビジネスマンになれよ。俺の言ってる意味、わかるな」

ノリは大きく頷く。

ビジネスマンとは、彼が昔思い描いていたような、月に$500稼ぐ人のことではない。

高価な時計や服を身に付ける事ではない。

名誉や肩書きにこだわる事ではない。

弱さを隠すために得た知識を振りかざす事ではない。

今、ノリは「将来の夢は?」と聞かれると、「ビジネスマン」と答える。

昔と変わらぬその答え、でも、意味は全く違う。

君なら、なれる。

だからこうして、私はCSAを離れられる。

 

「最近、お前“男”を上げたな」

カミナリ親父に ポンポンと肩を叩かれるノリは、嬉しそうに口をモゴモゴする。

昔から変わらない、嬉しい時のノリの癖。その顔は、気持ち悪い(笑)

 

ノリは公の場で「どうしてこの道を選んだの」と聞かれると

「俺は、最初はダンスなんかやるつもりなかったんだ。ピアノが習いたかった。

でも、ケンっていう日本人に、強引にやらされたんだ。」

最高に、可愛くて格好いい笑顔で、そう言える。

 

君は、私にとって

カンボジアで誰より頼れる、誰より信用できる、一緒に未来を見られる

人生の中で、特別な人だ

 

 

おまけ・ノリの名前について

ノリ(Norith)の正しい発音は、「ノリット」となります。

カンボジアの人は語尾をはっきり発音しない事が多くて、

メンバーたちがノリを呼ぶ時は「ナラッ!」と聞こえます。

私とカミナリ親父は、彼を出会った当初からその正しい発音ができず

出会った時にノリが中国語を習っていて、名札に「徳」と漢字を当てはめられていたのもあり

「ノリ」と呼び続けています。

最初は「俺の名前はノリじゃない!」と怒っていたノリも

「発音しづらいんだから仕方ない」と改める姿勢のない私たちに

いつしか諦めていました。

 

カミナリ親父は、今は「のりお」と彼を呼んでいます。

のりおー!のりおー!って(笑)

 

ノリの新曲↓は「ロミオ&ジュリエット」も参考にしたので

曲のタイトルを「のりお&ジュリエット」にしようぜと大笑いしていました。

 

 

 

 

ノリには可愛らしい恋人がいて、私は彼女とも仲良くなれました!

 

「俺、あんまり興味がない人には、適当に良い人でいられるんだ。

ニコニコして、優しくして、軽く冗談でも言っときゃいいかなって。

でも、彼女にはそれが出来ないんだ。

ずっと長く一緒にいたいから、俺の意見とか、本当の気持ちを解って欲しいんだ。

それで、ケンカになったりもするんだけど・・・

でも、それで良いって思ってるんだ。

だから、レナとケンも、ケンカするんでしょ。良いと思うよ。」

 

なまいきーーーー!!!

おじさんとおばさんを応援してくれて、ありがとう😂